No.112 保育士不足の現状 その解決策とは?
保育士業界の現状は、厚生労働省の2018年度の調べによると現場で活躍する保育士の数が約59万人であるのに対して、資格はあるが現場で働いていない、いわゆる潜在保育士は約95万人いることがわかっています。
保育士の勤続年数
続いて勤続年数について見ていきましょう。2019年度の厚生労働省の調査では、全国の保育士の勤続年数は男性で6.2年、女性で7.9年です。この勤続年数とは、1つの施設で働き続けた年数を表しています。
さらに一般的な労働者の勤続年数と比較してみましょう。男性は13.8年、女性は9.8年になります。これらを比較しても、やはり保育士は離職が早い職業だという事が言えます。
人材不足の原因
ここでは、保育士が人材不足になる原因についてまとめてみました。
- ○給料が低いため
- 国税庁の2018年の発表では、日本の平均給料が441万円なのに対し、2019年度厚生労働省の調べで保育士は約363万円という事が分かっています。保育士は全国平均の手取りでも17万~18万円と低めなのです。
- ○労働時間の長さ
- 正社員保育士の週当たりの実労働時間が40時間を超える保育所は、全体の約57%にも及びます。しかし実態は、サービス残業や残業時間としてカウントされない持ち帰りの仕事もあるため、実際の残業はもっと多いのです。
- また求人票で休憩時間は1時間と謳っていても、職員会議や反省会、清掃やイベント準備などがこの休憩時間にあてられている所もあります。あるいは、子供達との食事時間が休憩とみなされている職場もあり、本来の休息が全く取れていない保育士は大勢いるのです。
- ○人間関係による悩み
- 保育士は園長や保護者、保育士同士など様々な立場で人間関係に悩むことも多い職業です。また男性の保育士がまだまだ少なくて、女性が多いことから感情がぶつかり合う事も多く、働きづらさを感じている保育士もいるかもしれません。
- 保護者からの過剰な要望や時には、理不尽な苦情に対応しなければならない場面もあります。
改善の取り組み
人材不足を解決するために今、できる事はなんでしょうか。行政で行っている取り組みや他の園で行っている取り組みについて、ご紹介していきます。
- ○AIの活用
- ある保育所では一早くAIを導入しています。その主な活動内容は、行事写真の撮影・選定などの雑務、保育日誌などの内部の書類業務、連絡帳や保育だよりなどの書類業務などです。
- AIはあくまでも業務を補助する位置づけであり、保育士が集中して仕事に専念できるようサポートする役割になります。子供の情報管理の効率化やICTシステムによる労務管理の簡略化など、大幅な労働時間を短縮するのに役立ちます。
- ○先輩保育者によるOJT指導を充実
- 若手保育者にひとりずつ、OJT指導者をつけて全体的にフォローしていきます。OJTとは「On the job Training」の略で、実践を通じて経験豊富な先輩や上司が、若手保育者に知識や技術を計画的に伝える事で、業務知識を身につける育成手法のことです。
- OJT制度を導入して、決まった先輩に相談できるようになったことで、「安心して保育に取り組めるようになりました」と、現場からのお声を頂いています。
- ○保育士処遇改善策
- 2017年に始まった「保育士処遇改善等加算Ⅱ」という取り組みに着目して頂きたいです。職務分野別リーダーの給料に月額5,000円、専門リーダーと副主任保育士の給料に月額最大40,000円が上乗せされます。
- さらに令和4年2月から始まる処遇改善策として、令和4年9月までの8ヵ月の間、保育士に対して月額9,000円の賃金改善を行う費用が補助されます。また10月以降は公定価格の見直しにより、同様の給与の補助を行う予定です。
- なお補助を受けるには要件のクリアが必要ですので、ご確認ください。
- ■まとめ
- 保育士の現状は令和を迎えた今現在も、保育士不足に悩まされています。給料体制や労働環境を見直して保育士不足を解消し、より充実した保育が出来るようにしていきたいものです。