No.29 保育士の現状〜人材不足対策が期待される〜
現在、日本の待機児童問題と保育士不足は密接に関連しており、保育士への関心が高まっています。待機児童問題と保育士不足はどのようなものなのか、その原因や現状、課題、対策などについて見ていきましょう。
保育士と保育所
保育士は、保育所や児童福祉施設において子供の保育を行う、国家資格を持って業務に従事することが出来ます。保育所は、保護者が働いている、家族の介護などの理由で保育を必要とする乳幼児を保育することを目的とする通所施設で、保育所と保育園は施設名の通称です。
待機児童とは
保育所への入所条件を満たしているにも関わらず、保育所に入所出来ない状態にある児童のことで、出産後も働き続けなくてはならない女性の増加、保育所不足などが主な原因で、都市部及び3歳未満児において問題が深刻化しています。
国はエンゼルプランや新待機児童ゼロ作戦など連続して待機児童解消の施策を行い、入所定員数の増加をしましたが、利用者の増加に追いつかないのが現状となっています。
待機児童問題と保育士不足の課題
保育所に入所することを希望しながら、種々の理由により入所できない待機児童が、厚生労働省の最新発表では平成30年(2018年)4月時点で約19.5万人となっています。政府・地方自治体は待機児童の解消の施策で保育所等の増設を進めていますが、保育所や認可外保育施設の新設が進んだ地域では、保育士不足という新たな課題に直面しています。
待機児童問題と保育士不足の原因や現状
厚生労働省のデータによると、2013年〜2018年までの過去6年間で、女性の就業率は約67%〜約74%に上昇して、共働き世帯が増えたことで、保育施設の需要が高まりました。
保育施設の定員数や保育士の配置基準で子供の受け入れ数に限りがあるため、入園できない子供が増えています。
○保育士不足
共働き世帯の増加に伴い保育士不足の深刻化に追い打ちをかけています。保育士は増えてはいますが、離職率の高さなどから保育需要に対して保育士数の確保が追いつかないという現状で保育士不足が待機児童問題に関連しています。
○過去6年分の待機児童の人数の推移を下記でみてみましょう。
22,741人(2013年)
21,371人(2014年)
23,167人(2015年)
23,553人(2016年)
26,081人(2017年)
19,895人(2018年)
待機児童は毎年約2万人いることが厚生労働省の資料から女性の就業率は毎年1%〜2%程上昇して、2018年度では2万人を切って19,895人となっているのは、様々な対策の結果だといえます。
○保育士不足につながる不満理由
不満解消で保育士に戻りたいという人は約6割
保育士に再就職したいと回答した人 63.6%
○保育士に再就職したくない理由
問題が解消されても保育士への再就職不満
- 賃金がわりに合わない 47.5%
- 他職業への興味 43.1%
- 責任の重大さや事故への不安 40.0%
- 自身の体力・健康への不安 39.1%
- 休暇が少ない・取りにくい 37.0%
- 就業時間が希望と合わない 26.5%
- 再就職への不安 24.9%
- 仕事と子育ての両立が難しい 14.9%
賃金が希望と合わないことや就業時間が希望と合わない等の理由に関しては、待遇が少しずつ改善してきていると言えます。
責任の重さ・自己への不安や休暇が少ない・取りにくいといった理由に関しては保育士ならではの大変さとも捉えられ、休暇の取りづらさに関しては職場の人員配置が、同僚に遠慮してしまう、みんなが休暇を取っていないから休めないといった人間関係的な要素を含んでいると言えます。
待機児童問題解消対策と解決策
解消に向けて厚生労働省は以下のような施策を行っています。
○保育士の確保
待機児童問題の解消に向けて、厚生労働省は保育士の確保に従来の対策と新しく実施されている対策に力を入れ、保育士確保のため、人材育成、就業継続支援、再就職支援、働く職場の環境改善などがあります。
○人材育成
- 保育士資格を取得しやすくする取り組みの実施
- 保育士の魅力を伝え、目指す機運を醸成します
- 国家資格と保育士の専門性の向上
○就業継続支援
- 離職防止のための研修支援
- 就業継続への各種助成金の活用促進
○再就職支援
- 保育所支援センターの活用
- 保育士の新たな開拓
○働く職場の環境改善
- 処遇改善
- 雇用管理改善への取り組み実施
- 保育所との連携強化
○新対策
- 保育士試験実施の推進。
- 保育士勤続年数や経験年数処遇改善の実施。
- 指定保育士養成施設の学生に対する就職促進支援。
- 保育士試験受験学習費用の支援。
- 離職した保育士の再就職支援強化。
- 福祉系国家資格保有者の保育士試験科目等の免除検討。
○保育士不足解消への解決策
- 役職の新設
- 待遇の改善
- 地方自治体の対策
- ■まとめ
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保育への待機児童問題と保育士不足課題について見てきましたが、厚生労働省や自治体は様々な解決策を少しずつ解消に向けて実施し前進しています。待機児童ゼロまでは程遠く、問題が1つずつ解消され、完全な解消に繋がることを期待します。